カウンターテナーという種類の歌い手をご存知ですか?
「もののけ姫」の主題歌をうたった米良美一さんがとても有名ですが、成人男性でありながら、女声パートの音域を歌う歌手のことをカウンターテナー(あるいはカウンターテノール)といいます。
今回はそんなカウンターテナーについて、お話させていただければと思います。
なる理由は様々
なぜわざわざ女性の音域で歌おうなどと思うのでしょうか。
当然そこには様々な理由が存在します。
私も、何を隠そうカウンターテナーであるわけなのですが、私の場合、「このパートが一番自分にとって歌い易かった」というのが理由でした。
「そんなはずがあるか」
と思われるかもしれませんが、実際、私は過去にテノール、そしてバリトンと声種を変えてきて、そして最終的にカウンターテナーになりました。
意外に多いのが「歌手の裏声に憧れて」、それを入り口にカウンターテナーへの道を歩き始めるタイプです。
裏声の練習をしているうちに、「裏声歌手としてやっていこうかな」というふうになっていくわけです。
このタイプはとても裏声について熱心に勉強し、訓練できるタイプです。そして「男性が好み」という方も多い。
他にも、「男性の声が出ない」という理由のカウンターテナーも決して多くはありませんが、存在します。
いずれにせよ、あえて「裏声で歌い続ける」という選択をしている歌手たちですから、皆々それぞれにそれなりの理由をもってカウンターテナーを務めているといえます。
実は意外と歴史がある
このカウンターテナー、実は遥か昔にはもっと大きい「なる理由」が存在しました。
それが「教会」です。
昔々、教会では、聖歌隊などの奉仕活動を女性が行うことが禁じられていました。
そこで、男性のみの聖歌奉仕でありながら、女性パートの音域を加え、音楽をさらに豊かで充実したものにするために、カウンターテナーは重宝されていました。
その後、時代が降ると、「カストラート」という「去勢歌手」が登場し、カウンターテナーの文化はほぼ消滅します。
その中でもイギリスを中心に、カウンターテナーの伝統が細々と引き継がれていたようです。
やがてカストラートたちの時代が終わり、そのパートを歌える男性歌手が消滅すると、忘れ去れれていたカウンターテナーたちが徐々に再び認知されるようになってきました。
そして現在に至っているのです。
声楽界ではまだまだニッチなジャンル
とは言え、このカウンターテナーという声種、声楽界ではまだまだニッチなジャンルと言えます。
割合にしては全声楽家人口の100分の1といったところでしょうか。
その分、こちらがしっかりと求めさえすれば、仕事はあります。
どの分野でも「ブルーオーシャン戦略」は有効、ということでしょうか。
自分の適性を見極めることはどのジャンルにおいても重要
私がカウンターテナーになってみて感じたことは「自分にとって本当に合っていることをやることの幸せさ」でした。
「自分に宿っている適性を見極めること」
これは言葉にしてしまえば本当に簡単なことですが、いろいろな「現実の壁」に阻まれ、なかなか実現できている人が少ないのが現実なように思えます。
しかしながら私は、この「適性」がその人の生き方を本当に左右するということを、身を以て実感しました。
この記事を読んで、少しでもご自身に眠る「適性」について、思いをめぐらしていただければと思います。
コメント